日本郷土資料保存協会

京都市立右京中央図書館による桑原武夫寄贈資料の不正な取扱について

京都市立右京中央図書館による桑原武夫寄贈資料の不正な取扱について

先日より、ニュースで話題になっている次の事件。

桑原武夫さんの蔵書1万冊余を廃棄 京都市立図書館」(NHKニュース)
桑原武夫蔵書:遺族に無断で1万冊廃棄 京都市が謝罪」(毎日新聞)
桑原武夫氏の蔵書1万冊廃棄 京都の図書館、市職員処分」(京都新聞)

まるでうっかり捨ててしまったように書かれているが、これは犯罪であるから、市職員は当然に逮捕し裁かれるべきである。市が保有している社会的な価値が非常に高いものが、本ではなくバスや機械や建物であったら、こんな扱いになるだろうか。

無知であることは罪ではないので(人は誰でも無知である)、この史料の価値を知らない人がいることについては仕方ない。しかし、史料の管理担当者が貴重で有名な史料の価値について無知であるのは職務放棄である。銀行員が、担当者レベルでは価値のわからない他国の貨幣を、場所を取るからといって捨ててしまうことなどありえようか。大工が、送られてきた家の柱を、資材置き場に入りきらないからといって捨ててしまうことがあるだろうか。コックが邪魔だからと捨てたものが、実は最高級のフカヒレだったというようなことがあるだろうか。

本を箱に入れてしまうだけなら図書館なんて必要ない。価値ある資料をきちんとアーカイブし公開するのが図書館の仕事なのに、それを怠ったから資料を見に来る人がいなくなるのだ。あまつさえ捨ててしまうとは。しかも、これが京都で起きた出来事であるということに愕然とする。桑原は新京都学派の筆頭のまさにその人ではないか。戦後の京都の知の最先端であるのに、理解に苦しむ。

そもそも、廃棄以前の管理状況も非常に問題のあるものだった。毎日新聞の取材によれば、「2008年に新しく完成した右京中央図書館(同市右京区)に記念室を移した際、蔵書については市立図書館全体の図書と重複が多かったため、正式な登録をせずに旧右京図書館(同区)で保管。翌年に向島図書館(同市伏見区)の倉庫に移した」(2017.4.27)ということだ。当然、登録されていなければ市民や研究者はその資料のありかがわからず、そもそもの存在も不明で、資料を借り出すことなどできやしない。同記事は「その後、向島図書館も改修のため保管できなくなり、施設管理担当の職員が右京中央図書館の職員に相談。この際、蔵書に関する問い合わせが08年以降1件のみと活用されている状態でなかった」ことが廃棄の理由となったというが、理由になっていない。登録し公開する、そういうことがされなければ、どうして活用できるというのか。むしろ1件の問い合わせをした人は、相当に調査し、関係者にヒアリングし、それでもってようやっとたどり着いた人であろう。「誤廃棄」などと書き立てているメディアもあるが、これは「誤廃棄」ではない、明らかに「不正保管・不正廃棄」である。

なんの為に市民の税金を使っているのか。貴重な資料を秘匿し、十分に公開もせず、倉庫代を払って職員の給料を払って、金額では代えられないような貴重な資料を捨てるという愚行。これが京都市でなければ、もっとましな対応があったのではなかったか、せめて大学にでも入れてくれれば、と思わざるを得ない。

市としても、職員の責任をもっと厳しく追求すべきだ。市の「京都市図書館不用図書取扱要綱」には、除籍できる資料の基準として、

⑴ 汚損,き損等により利用できなくなったものであること。
⑵ 旧版となったため,利用価値が乏しくなったものであること。
⑶ 複本や類書が多く,余り利用されていないものであること。

を挙げている。(1)については、参照されることもほとんどなかったのだから汚損も毀損もしていない。(2)の旧版となったため利用価値が乏しくなったというのも当てはまらない、むしろ時間が経って桑原の思想や研究を知るためには蔵書が必要であり、利用価値が上がっている。(3)については、桑原の蔵書という、桑原の書き込みやメモが残された桑原の知や思想を知るために全く他に類のない貴重書と言わざるを得ないから、複本や類書が多いというのは全く当たらないし、保管方法の問題で利用されていないのだからむしろ利用を促進するような施策が必要であった。

いずれにせよ、これが犯罪や事件でないというのであれば、少なくとも京都市の行政職員が資料を意図的に廃棄し焚書することを妨げることができないし、せめて「船橋市西図書館蔵書破棄事件」のような形で司法の場で是非を明らかにしてほしい。このままうやむやになることを許してはならない。桑原の蔵書なんぞには全く関心がない、勝手にやってくれという京都市民でも、国家賠償法で億単位の金額を京都市に取り返すことができるといえば(それは不正廃棄のために京都市から奪われた金額なのである)、椅子を蹴るようにして立ち上がらざるを得ないだろう。

まずは、情報公開請求を行って、経緯の如何を明らかにし、おって報告するつもりである。

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